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チリの酒でまず思いつくのがチリワインである。輸出しているくらいだから離島のイースター島にもきちんと出回っていて簡単に買うことができる。ただ、日本のように小瓶に入れて売っているものがほとんどなくフルボトルばかりなので、冷たいやつを一度に飲みきれる量だけ欲しい時には向いていない。 そこで登場するのがビールだ。スペイン語でセルベッサ。スーパーに行けばカキンコキンに冷えた缶ビールが棚いっぱいにズダーッと並んでいる。三種類ぐらいしかないかわりに本数は豊富で、しかも安い。ジュースが80円でビールが90円。同じく90円の小瓶入り果実酒とともにそれこそ毎日飲んでいた。部屋のゴミ箱が空き缶であふれかえるくらいに。
比べて高いのがレストランの食事。一品料理に飲物をつけてチップを置いて千円ちょっと。日本だってそのくらいはするけど、安く済ます他の選択肢が存在しないことが問題だ。スーパーでは総菜の類は一切売られていない。一回の食事に千円払うのがイヤな場合、次はいきなり缶詰めやビスケットやスナック菓子になってしまうのである。これには参った。 窮状を救ってくれたのが果物売りの露店だった。飾り物のようにきれいなパイナップルがまるごと一個で三百円。見かけ倒しじゃなくて本当に美味い。スイカは1/6カットくらいのやつが百円ちょっとでこれも甘くてみずみずしくて美味い。島内をレンタカーで走っていてパイナップル畑を見た記憶など全くないのだが、わざわざ空輸してきてまで売るような物でもないから観光ゾーンではないところに畑があるのだろう。 果物とビール。昼飯か晩飯、下手すりゃ両方この組み合わせで腹を満たしていた。ビタミンと食物繊維を取りまくっていたおかげで体調を崩すことはなかった。さすがに痩せたけど。パイナップルダイエットやってたようなものだもんな。
ワインとビールの他にチリでメジャーな酒にブドウの蒸留酒・ピスコがある。もともとはペルーの酒だったのがチリでも支持を集め、今ではチリ国内でも製造されてワインに負けないくらいの量が売られている。ピスコにレモンジュースと砂糖を加えて氷でシェイクした「ピスコサワー」はチリ人の大好物で、どこのレストランでも飲物メニューの一番最初に必ず載っている。俺も三回飲んだけどブドウの味は全然しなくて、ギムレットをもっと甘くしたような甘酸っぱいカクテルだった。確かに美味い。ただギムレットと同じかそれ以上にアルコールがキツい上にワイングラスで出てくるからこいつを1杯飲み干すと確実に足にくる。 「ピスコサワーは美味しいんだけど飲み過ぎると次の日がツラいのよね」(テレサさん談) ピスコの含有量が多いのか、ピスコサワーは他のカクテルに比べて五割くらい値段が高い。もっと手軽にピスコを飲みたい場合にはピスコにコーラを混ぜた「ピスコーラ」がある。学生時代、サークルの合宿なんかでウィスキーをコーラで割って飲んでたでしょう。あれと同じ味。
ラノ・ララク山頂に座って雄大な景色を眺めながら水を飲んでいるところへ婦人がやってきた。ミネラルウォーターの空きボトルに水道水を詰めたやつである。ミネラルウォーターを買ってほとんど全部飲んでしまってから製造年月日が半年前であることに気がついた。そんなもん飲むくらいなら今日の水道水のほうがよっぽどマシだ。そう考えて、以後は全部水道水で通したのだった。ガイドブックに「飲料水として問題ない」って書いてあったからなんだけど。ミネラルウォーターは室温でも一年くらいはもつらしい。あとで聞いた話。 とにかくラノ・ララク山頂だ。婦人は俺を見るなり「あら。水を飲んでるのね。うふふ」と笑った。え?何か?「うちの主人ったらもうお酒飲んでるのよ」太ったオッサンが岩場を登ってやってきた。二人はチリ本土からやってきた観光客である。 「よぉニイちゃん。飲んでるかい?」
力強く握手を交わす俺とオッサン。隣で笑い転げる婦人。ああ俺は今旅行してるんだなと実感する瞬間だ。
イースター島からタヒチへの帰路。ラン・チリ航空機内でスチュワードにピスコーラを頼んだら「この日本人知ってやがるよ」とでもいわんばかりにニヤリと笑ってギャレーヘ戻っていき、ちゃんと作って持ってきてくれた。この次南米でピスコを飲むのは何年先になるのだろうか。
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