「イースター島へ行きたい」と言っていたら本当に行けることになってしまった。我ながら驚いている。イースター島といえばモアイ。モアイといえばイースター島。 そのモアイが日本にも存在するのだという。渋谷のモヤイ像ではない。「地球の歩き方」をそのまま引用しよう。 日本にもある?!
アフ・トンガリキのモアイを立ち上がらせるため、日本国内でトンガリキと同じ材質で同じ大きさでの模擬モアイが作られ、実際にクレーンで立ててみる技術的な研究がおこなれた。現在そのモアイは、直島諸島の女木島にあり、観光の目玉のひとつとなっている。 「研究がおこなれた。」って。ちゃんと校正しろよ。「同じ材質で同じ大きさでの」って表現もくどい。 んなこたどうでもいい。女木島(めぎじま)は高松市沖の瀬戸内海に浮かぶ小島で別名「鬼ヶ島」。桃太郎が鬼退治に出かけたあの鬼ヶ島である。大阪から直線距離で百キロメートルちょっとしか離れていない。こんな近所に世界遺産(のパチもん)があったとは。本物と対面する前に是非見ておかねば。
イースター島渡航決定記念緊急企画
モアイ体験ツアー in 鬼ヶ島
いままで無計画かつ無駄な動きをさんざん繰り返してきた「とりっパーずワールド」の旅行が今回からレベルアップ。旅行業取扱主任が企画・手配および添乗の全般に渡って強力な援護を行うことになったのだ。俺が一般旅行業取扱主任の試験に受かっただけの話だが。国土交通大臣お墨付きの大馬鹿旅行を以前にも増してしそうな気がする。
曇天の大阪から高速バスで三時間。高松はド快晴だった。さすがに日本一雨が降らない町である。とりあえず駅前のうどん屋で昼飯を食う。「セルフの店」と書いてあったので自分でウドンを湯がかなきゃいけないのかと思ったらカウンター越しに注文してトッピングをセルフサービスで皿に取るだけだった。でも香川県には客が生麺を茹でる本当にセルフサービスな店も存在するらしい。
新しくなった高松築港から雌雄島海運の「めおん2」で女木島へ渡る。切符を買おうとするとそこは小豆島行の窓口で、雌雄島海運は建物の外だという。正午だというのに全く陽が当たっていない売場で切符を買って、もう一つ手前にあった「大島○○園待合所」を何気なく覗き込んだ。 一目でハンセン病患者(だった)とわかるサングラスの老人が二人座って談笑していた。 考えてみれば瀬戸内海の島は隔離施設をつくるのにうってつけだ。「気候が温暖」という言い訳も立つし、無人島や有人島でも陸路が全くない僻地に建てれば地元住民とモメることもない。海が荒れないから補給が断たれることもない。瀬戸内海にはハンセン病の施設だけじゃなくて他にもいろんな隔離施設があるのだろう。
社会派ルポならここからどんどん日本社会の暗部を糾弾する方向へと突き進んでいくところなのだろうが、これは脳内麻薬でひとりトリップしている旅行野郎のモアイ体験記なのですぐにフェリーで鬼ヶ島へと突き進んでいくのである。 出航してわずか二十分で女木島へ到着。まだ高松市街がくっきり見えている。四キロメートルしか離れていないんだから当然だ。それじゃあモアイを探しに行くぞ!と張り切る間もなく、そいつは港のすぐ横にぶっ立っていた。張り合いがないなあ。もう。
遠目に見るとたいして大きくない印象を受けたモアイだがすぐ近くまで寄ってみてもやっぱりそんなに大きくはない。そうはいってもさすがに三メートルはあるんだけど。本物と同じだからちゃんと石を削って作られていて表面がざらざらする。本家のモアイは海岸にあっても集落の方を向いているのが普通で、女木島のモアイもちゃんと海を背にして立っている。北向きだから正面写真を撮ってもよく写らなくて困る。 「モアイは大したことないと聞いていたからイースター島には行かなかった」と大嫌いな旅行作家が書いていた。まったくそのとおりで、これが一つ立っていたところでそれほど感動するものでもない。でも、樹木が一本もない荒涼とした断崖に異形の石像が十五体並んで立っている風景を想像してみてもまだ「大したことない」のだろうか。わからないならそれでいい。オマエは行かない、俺は行く。それだけだ。
高松駅に降り立って二時間経たないうちにモアイ体験を完了してしまった。せっかくだから島内探検に出かけよう。 鬼ヶ島なので鬼が住んでいたという洞窟を見に行く。モアイとたわむれているうちに送迎ワゴンは出てしまっていた。観光案内所で一日二百円の格安チャリンコを借りて延々と続く坂道を登る。洞窟は山の上にあるのだ。 大汗をかきながら頂上までたどりつき、詰め所のソファで寝ていたオバちゃんをたたき起こし入場料を払って中へ入る。洞窟といっても自然のものではなく数百年前に人工的に掘られたものだという。「鬼」って海賊のことなんだろう、きっと。 かつてサークルの先輩達と高松へ来たときに、メンバーのひとり・N井さんが「鬼ヶ島の洞窟に鬼の的当てがあるらしいからやりに行こう」と言っていたことを思いだした。その時は船の時間が合わずに行けなかった。よーしN井さん、あなたの分まで僕ががんばりますよ!と張り切ってみたのはいいのだが、そんなものはどこにもないまま出口にたどりついてしまった。ガセネタか?撤去されたのか?そのかわりになぜか「真実の口」があった。よく見ると鬼の口だ。センサーがついていて手を突っ込むと「ごおーっ!」と吼える。N井さんが聞いたのはボールを当てると吼える鬼の的当てじゃなくてコレのことだったんじゃないのか。
それにしても見晴らしのいい島だ。快晴だしクルマは少ないし寒くもない。チャリンコ最高!(除:上り坂)夏は海水浴の観光客で賑わう砂浜も今はのどかそのものだ。明らかに人工の砂浜なんだけど。天然の砂浜をつぶして護岸してそれから人工の砂浜をつくるんだからおかしな国だ。一生懸命働いておかしな国の繁栄に加担しているのはこの俺だが。
隣の男木島(おぎじま)に渡ってみる。何を撮りに行くのかは知らないがNHK高松放送局のクルーが機材とともにフェリーに乗っていた。あまり時間がないので港周辺の集落を少しだけ歩く。洗濯干しを大きくした感じの干物製造機がモーターでくるくるまわっている。明和電機が作りそうだな、これ。積丹半島でも見たことあるけど。
最終便で高松へ戻り、晩飯なに食おうかなと歩いているうちにまたうどん屋へ入ってしまった。香川県でしか見たことがない「しょうゆうどん」を注文する。ウドンの上に大根おろしとおろしショウガと刻みネギが載っかったやつが出てくる。汁は入っていない。つけ汁もない。ではどうするのかというと、普通の醤油をダイレクトにぶっかけてごしゃごしゃかきまわしズルズル食ってしまうのである。下品なことこの上ないこいつが、美味い。大阪のふにゃふにゃウドンで同じことをやってみると盛大に不味いので決してマネしないように。
モアイ体験記のはずがウドン体験記になっちゃってるよ・・・。
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