遠い世界に

〜これが「桃岩荘」だ!〜


 
 
 

 
 

 「好き」「嫌い」で真っ二つに意見が分かれてしまう日本最強(最狂?)の宿・桃岩荘ユースホステル。桃岩荘って怖くないの?私でも泊まれるの?「知性・教養・羞恥心」が人並みにある一般人のための「桃岩荘の基礎知識」です。

 それでは元気良くいってみましょう。

「発車オーライッ!!!」




 ※2006年9月を最後に桃岩荘へ泊まっていないため、書いたことと現状が違っている可能性が多々あります。実際にどうなのかは自分で行って確かめてきてください。



(1)いきなり結論

 最初に結論を書いてしまおう。

おもしろい宿である。ただし全ての面で優れているわけではないので誰にでも薦められるわけではない。
 
 

 はじめての人はとりあえず次のことをやってみてください。

@「8時間コース」を歩く A2連泊以上する Bミーティングでは羞恥心を捨てて歌って踊る
 
 

 桃岩荘を語る要素は多い。項目ごとに解説しよう。
 
 

(2)歌と踊り
 
 
 


 
 

 歌と踊りが登場するのは主にミーティングと香深港のお見送り。初めて泊まった人間が最初に未知との遭遇を果たすのが桃岩荘名物「ミーティング」である。

 ミーティングは二部構成。第一部は礼文島の観光案内。役に立つのでヘルパーのギャグには目をつぶって(面白ければ笑えばいい)真面目に聞くことをお勧めする。

 そして第二部。ギターを肩から提げたニイちゃんと男ヘルパー六人が登場。前に整列し、客も全員起立。歌と踊りのはじまりである。

 歌われるのは古くて誰も知らない70年代フォーソング(歌うだけで踊らない)それなりに知ってるアニメソング(サザエさん、ひょっこりひょうたん島、月光仮面、エイトマン、鉄腕アトム、ぎんぎんぎらぎら夕陽が沈む・・・全部歌って踊る)歴代のヘルパーが作ったオリジナルソング(フォーク調)。

 体験した限りでは歌や踊りの練習はなく、全部ぶっつけ本番。フォークソングには先行が入るので真似して頑張って歌う。踊りも見よう見まねでとにかく踊る。「わからないから」と恥ずかしがって黙って見ていると確実につまらなくなるのでとにかく声を出して踊ってみること。どうせあなたのことを見てる人間なんていないのだから。

 フォークソングは毎回変わるのでどうしようもないが、一番最後に歌うのは「遠い世界に」(五つの赤い風船)と決まっているので、行く前にTSUTAYAでCDを借りて練習しておくとよい。アニメソングも変わらないのでこれまた要予習。「月光仮面」なんて知っているようで声に出して歌ってみると意外と知らなかったりする。
 
 
 


 
 

 あなたに少しでも好奇心があるのなら、一度「お見送り」で踊ってみることをお勧めします。特に昼便の見送りは(1)団体客が多い(2)稚内行、利尻行が二連発で出る ためギャラリーが果てしなく多く、「病みつきになりそう」(宮崎県庁職員・K君)「俺、夕方もやる」(環境省職員・T君)「帰ったら会社倒産してるといいんだけどなあ」(俺)などなど、「頭の中身が桃色人間」を多数産み出す温床と化しております。

 さあ、みんなで「踊るダメ人間」になろう!
 
 

(3)ヘルパー
 
 
 


 
 

 ユースや民宿は、通常、経営者家族+ヘルパーで成り立っているのだが、桃岩荘で見かけるのはヘルパーのみ。皆、若者もしくは歳の割には若く見える人たちばかりである。

 彼・彼女たちを一言で表現すれば「大学の応援団」。ダミ声かつ大声(男だけ)、礼儀正しく動作がきびきびしている、常に身体を動かして何かをやっている、よく働く、人あしらいが上手い・・・

 桃岩荘のヘルパーは多くの場合、香深港やミーティングでの絶叫ダンサーとしての姿でのみ語られていて内面が語られることはほとんどない。

 桃岩荘で印象に残っているのがヘルパーたちの働く姿だった。何もやっていない状態がほとんどないのである。手が空くと霧吹き片手に雑巾掛けをはじめるのだ。

 田舎の父ちゃん母ちゃんもあの雑巾掛けを見たら黙るしかないと思う。歌って踊れるだけでは桃岩荘のヘルパーは務まらないのだ。
 
 

(4)宿泊施設としてはどうなのか
 
 
 


 
 

 桃岩荘を純粋に宿として見た場合、お世辞にも優れているとは言い難い。

・風呂が狭い。延べ数十人が入った後の、家庭用バスタブの茶色い湯はインパクトがある
・集落から遠く離れているので何かと不便
・構造上、足音が響くので「8時間コース」の人たちが動き出す5:00には目が覚めてしまう

 最大の難点が自分の時間がほとんどないこと。日没と同時にミーティングがはじまるため、それまでに入浴と夕食を済ませておくように言われる(ミーティング中でも風呂には入れる)。ミーティング終了後、消灯までの残り時間は一時間。「8時間コース」を歩く場合、ミーティング終了後に行われる説明会への参加が義務づけられているため時間はさらに少なくなる。

 消灯は22:00。冗談抜きで真っ暗になってしまうので以後はただ眠るのみ。ヘッドランプか懐中電灯を持っていけば日記くらいは書ける。

 桃岩荘で努力せずに友達を作りたかったら「8時間コース」を歩くこと。ちなみに「8時間コース」と言いながら実際には10時間くらいかかるので連泊しないと参加できない。
 
 

 宿泊料金が安い。収容人数が多く(100人以上泊まったこともあるらしい)他の民宿が全部満員でも泊まれる。宿としての利点がそれくらいしかない桃岩荘が今日まで生き残ってこられたのは、やっぱり歌と踊りがあるからなのだろう。

 最後に。館内は清掃が行き届いているのでとてもきれいです。
 
 

(5)桃岩荘の一日
 
 
 


時計の「6:10」は桃岩時間
壁に貼られている「17:25」(フェリー出航時間)は日本時間

 
 

 桃岩荘では独自に日本時間よりも三十分早い「桃岩時間」を制定(?)している。桃岩時間の「7:00」は日本時間の「6:30」に該当する。

 三十分早いわけだから勘違いしても船やバスに乗り遅れることはない。三十分余計に待たされるだけである。しかし、会話に時間が混じると、いちいち「7:00って桃時の?」と尋ねなければならないので面倒くさい。

 「とりっパーずワールド」では全て日本時間で統一しているので、そのつもりで読んでちょうだい。
 
 

<4:40>「8時間コース」参加者の起床時間。ヘルパーが個別に起こしに来てくれる。
<5:00>「8時間コース」参加者が動き始める。響き渡る足音で無関係の者も目が覚める。
<5:30>「8時間コース」参加者 出発。
<6:00> 起床。館内中に「石狩挽歌」(♪沖を通るは笠戸丸〜)が大音量で流れる。
<6:30> ラジオ体操(やりたい奴だけ)。スタンプがもらえる。
<6:30> 朝一発目の船に乗る人の荷物提出締切時間。荷物だけはクルマで港まで運んでくれる。
<7:10> 朝一発目の船に乗る人の見送り。見送られた人たちは手ぶらで港まで40分の道のりを歩く。歩けない人、歩きたくない人はクルマで送ってもらえる。
<7:30> 大掃除大会(やりたい奴だけ)。
<8:10> 見送り部隊&クルマで港まで行く軍団出発。
<8:45> 第一便・稚内行 出航。香深港の桟橋で歌って踊る。
 

<〜19:00> 夕食と風呂はこれまでに済ませておく。
<19:00くらい> 日没。晴天時のみ「落陽の儀式」。陽が沈む瞬間に合わせて吉田拓郎の「落陽」を合唱。
<日没後> ミーティング開始
<20:00> 歌と踊りがはじまる。
<21:00> ミーティング終了。「8時間コース」参加者はこの後に説明会あり。
<21:50> 「消灯10分前」のアナウンス。どんなに盛り上がってても座談会は強制終了。
<22:00> 完全消灯。まじで真っ暗。
 
 

 ね。自分の時間ってないでしょ?(特に夜)

 桃岩荘の名誉のために書いておくと、起床と消灯以外は強制ではない。ミーティングも出たくなければ出なくても大丈夫だし、朝だって自分で勝手にバスに乗って帰っても構わない。

 でも、せっかくなんだから思いっきり歌って踊ってみたら?やればできるよ、きっと。
 
 
 


 
 

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